立場をわきまえていれば騙されない!
ストーリー
岩がちの谷に住むライオンが病気になって体を横たえながら、友だちの狐に向かってこう言った。
「松の木の下の藪に鹿がひそんでいる。そいつを食べたいが、もはや自分では追う力がない。あいつを言いくるめてここまで連れて来てくれ。」
その頼みを聞いた狐は、鹿のひそんでいる藪まで来ると鹿に向かって「今日は、めでたい話を伝えに来た」と語りかけた。
「私の隣人のライオンは具合が悪くお迎えも近いのです。誰が次の王になるのが良いかと腐心しておられた。結局は鹿が王にふさわしいとお考えだ。姿が誇らしく、長寿で、角は立派だ。これからライオンのお側に行って、苦しむライオンを元気づけるべきだ。」
狐がこのように言うと鹿はのぼせ上り、ライオンの穴へと入って行った。
するとライオンは鹿を見るなり、やみくもに襲いかかったので、爪の先で鹿の耳をちぎっただけで、鹿は一目散に逃げ帰ってしまった。
ライオンは狐に「もう一度あらたな策略を考えてくれ」と頼んだ。
狐は逃げた鹿の足跡をたどり、走り疲れて木陰で休んでいる鹿を見つけた。鹿は狐を見るなり、怒りながら言った。「憎いやつめ。今さら何し来た。他の奴を選んで王にするがいい。」
しかし狐はへこたれず、こう言った。「ライオンはあなたに耳寄りな忠告をしようとして、耳にさわったのです。あなたは無理に身を引き離したから怪我が大きくなったのです。ライオンに敵意は無く、好意からあなたを百獣の王にするのです。」
こうして狐は鹿をライオンの穴へ再び入らせた。
ライオンは鹿を餌食にして独り占めした。ライオンが食べている間中、腹をすかせた狐は突っ立っていた。そこへ鹿の心臓が転がって来たので、狐はこっそり飲み込んだ。
ライオンは鹿の内臓をひとつづつ数えてみたが、心臓だけが見つからず洞穴中を探し回った。
すると、それを見ていた狐が言った。
「探しても無駄です。初めから無かったのです。ライオンの住処に二度も入ってくる鹿に、どんな心臓があるというのですか?」
あまりに都合の良い話に疑問を持てる人は、幻想に飲み込まれず、搾取を避けることができる。
だが、騙される人は自分の立場をわきまえていない。だからこそ、おだてに乗り、のぼせ上がり、自滅してしまう。
立場をわきまえていれば、降って湧いたような名誉や誘惑に感情を乱されることもなく、冷静に距離を取ることができる。幻想に抗う力は、立場の認識から生まれる。
ここで言う「立場をわきまえる」とは、自分を卑下することではない。それは、語りの裏を読み、不釣り合いな称賛や権威に惑わされず、搾取を遠ざける知性である。
立場をわきまえていれば、騙されることはない。
あまりに都合の良い話に疑問を持てる人は、幻想に飲み込まれず、搾取を避けることができる。
だが、騙される人は自分の立場をわきまえていない。だからこそ、おだてに乗り、のぼせ上がり、自滅してしまう。
立場をわきまえていれば、降って湧いたような名誉や誘惑に感情を乱されることもなく、冷静に距離を取ることができる。幻想に抗う力は、立場の認識から生まれる。
ここで言う「立場をわきまえる」とは、自分を卑下することではない。それは、語りの裏を読み、不釣り合いな称賛や権威に惑わされず、搾取を遠ざける知性である。
あなたは今、どんな語りに心を動かされているだろうか。
それは、あなたの立場を尊重するものか。それとも、搾取の入り口か。