イソップ寓話の教訓No.336「ライオンと狐と鹿」

立場をわきまえていれば騙されない!

ストーリー

岩がちの谷に住むライオンが病気になって体を横たえながら、友だちの狐に向かってこう言った。

ライオンと狐と鹿の画像
イソップ寓話の教訓No.336「ライオンと狐と鹿」

「松の木の下の藪に鹿がひそんでいる。そいつを食べたいが、もはや自分では追う力がない。あいつを言いくるめてここまで連れて来てくれ。」

その頼みを聞いた狐は、鹿のひそんでいる藪まで来ると鹿に向かって「今日は、めでたい話を伝えに来た」と語りかけた。

「私の隣人のライオンは具合が悪くお迎えも近いのです。誰が次の王になるのが良いかと腐心しておられた。結局は鹿が王にふさわしいとお考えだ。姿が誇らしく、長寿で、角は立派だ。これからライオンのお側に行って、苦しむライオンを元気づけるべきだ。」

狐がこのように言うと鹿はのぼせ上り、ライオンの穴へと入って行った。

するとライオンは鹿を見るなり、やみくもに襲いかかったので、爪の先で鹿の耳をちぎっただけで、鹿は一目散に逃げ帰ってしまった。

ライオンは狐に「もう一度あらたな策略を考えてくれ」と頼んだ。

狐は逃げた鹿の足跡をたどり、走り疲れて木陰で休んでいる鹿を見つけた。鹿は狐を見るなり、怒りながら言った。「憎いやつめ。今さら何し来た。他の奴を選んで王にするがいい。」

しかし狐はへこたれず、こう言った。「ライオンはあなたに耳寄りな忠告をしようとして、耳にさわったのです。あなたは無理に身を引き離したから怪我が大きくなったのです。ライオンに敵意は無く、好意からあなたを百獣の王にするのです。」

こうして狐は鹿をライオンの穴へ再び入らせた。

ライオンは鹿を餌食にして独り占めした。ライオンが食べている間中、腹をすかせた狐は突っ立っていた。そこへ鹿の心臓が転がって来たので、狐はこっそり飲み込んだ。

ライオンは鹿の内臓をひとつづつ数えてみたが、心臓だけが見つからず洞穴中を探し回った。

すると、それを見ていた狐が言った。

「探しても無駄です。初めから無かったのです。ライオンの住処に二度も入ってくる鹿に、どんな心臓があるというのですか?」

この物語の教訓は、
立場をわきまえていれば騙されない。

普通の人は、あまりに都合の良い話に疑問を持つ。だから騙されない人は自分の立場を理解している。ところが騙される人は自分の立場を理解していないし、相手の腹の中も見えていない。だから騙される。おだてられ、のぼせ上り、自滅する。
自分の立場を理解していれば、相手の腹の中も見えてくるのだ。


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