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慢心を戒める教訓

  • イソップ寓話の教訓No.63「弁論家デマデス」

    ストーリー

    弁論家デマデスがある時、アテネで演説をしていたが、聴衆が少しも身を入れて聞かないので「イソップ寓話を語らせてほしい」と頼んだ。

    同意が得られたので語り始めて言うには、

    「デメテル女神と燕と鰻が道連れになった。川のほとりにさしかかった時、燕は空へ飛び、鰻は水に潜った。」デマデスはこれだけ言って黙った。すると聴衆が、

    「デメテル女神はどうなったんだ?」と尋ねるので、デマデスが言うには、
    「お前たちに腹をたてていなさるのだ。国の問題を聞かず、イソップ寓話を聞きたがっているのだから。」

    ※デマデス:古代ギリシャ、アテナイの政治家。貧しい一家に生まれ、一時は船員として働いていたが、巧みな弁舌と狡猾な性格によって、アテナイで高い地位に昇った

    多くの人は難しいことを避け簡単な事に流れる。しかし賢明なことではない。

    政治家デマデスの画像
    イソップ寓話の教訓No.63「弁論家デマデス」
  • イソップ寓話の教訓No.51「農夫と蛇」

    子供を蛇にかみ殺された親の話

    ストーリー

     農夫の子に蛇が這いよってかみ殺した。

     農夫の悲しみは一通りでなく、斧を手に取ると蛇穴の前へ行って「出てきたら一打ちにしてやる!」と見張っていた。

     蛇が首を出したので斧を振り下ろしたが、狙いが外れて側にある岩を二つに割ってしまった。

     その後、用心深くなった農夫が、蛇に仲直りを申し出たところ、

     蛇は「割れた岩を見たら、あんたと仲良くすることは出来ない!あんたも息子の墓を見ればそうだろう!」

    心の傷は癒すのが難しい。
    「自分が心から愛情を持って接したら相手は変わるはず」、「自分が変われば相手も変わるはず」と思うのは幻想だ。仇敵でも片思いの相手でも同じこと。そんな幻想を抱いていたら、変わらない現実を知った時に打ちのめされるだけ。現実は変わらないと思っていた方が心の傷が浅くて済むだろう。

    農夫と蛇の画像
    イソップ寓話教訓No.51「農夫と蛇」
  • イソップ寓話の教訓No.50「鼬(イタチ)とアプロディテ」

    見た目を変えても中身を変えるのは難しい!

    ストーリー

    鼬がハンサムな若者に恋をして「自分を女性の姿に変えてください」とアプロディテに祈った。女神は鼬の切ない気持ちを憐れんで、美しい乙女に変えてやった。
    すると若者もそれを見て恋に落ち、妻にしようと家に連れて帰った。
    二人が寝室でくつろいでいると、アプロディテは鼬がその姿を変えたものの、性格も改めたかどうか確かめたいと思い、鼠をポンと放り込んだ。
    彼女は今の身の上を忘れ、ベッドからとび起きるや、食ってやろうと鼠を追いかけまわした。
    その姿を見た女神はいたく立腹し、彼女を元の姿に戻してしまった。

    見た目を変えても中身を変えるのは難しい。

    イタチと女神の画像
    イソップ寓話の教訓No.50「鼬とアプロディテ」
  • イソップ寓話の教訓No.32「人殺し」

    人生はなるようにしかならない、と気持ちを切り替える。

    ストーリー

    人を殺した男が、相手の身内に追われていた。

    ナイル川のほとりまで来たところ、狼と鉢合わせして、恐ろしくて川辺に生える木に登り、身を潜めていた。

    すると毒蛇が頭上で口を開けている。

    そこで川に飛び込んだところ、ワニが待ち受けていて、人殺しを食べてしまった。

    追われている者には気の休まる時も場所も無い。仕事に追われている、生活に追われている、育児に追われている、これでは体もメンタルもまいってしまう。人生はなるようにしかならない、と気持ちを切り替えることも大切だ。

    人殺しの画像
    イソップ寓話の教訓No.32「人殺し」
  • イソップ寓話の教訓No.25「翡翠(カワセミ)」

    ストーリー

    カワセミは敵を警戒して、海辺の断崖に巣をつくる鳥だ。

    ある時、お産の近いカワセミが岬にやって来て、海に突き出た岩を見つけ、そこで雛を育てることにした。

    ところが餌を求めて出かけた間に、突風のため海が波立ち、巣が波にさらわれて雛を死なせてしまった。

    戻ってきたカワセミは事の次第を悟るとこう言った。

    「ああ、情けない!陸は安心できないので、海に逃げて来たが、一層信用できない場所だったとは!」

    危険はあると思っている人にしか見えない。

    カワセミの画像
    イソップ寓話の教訓No.25「翡翠(カワセミ)」
  • イソップ寓話の教訓No.24「腹のふくれた狐」

    ストーリー

    腹をすかせた狐が、木の洞穴に、羊飼いの置いていったパンと肉を見つけ、中に入って食べてしまった。
    腹がふくれ外に出られずに嘆き悲しんでいると、別の狐が通りかかり、嘆き声を聞きつけると近づいて訳を訪ねた。
    そして事の次第を聞くと、中の狐に言った。
    「入った時と同じ状態になるまで、そこに居ることだ。そうすれば簡単に出られるさ!」

    自らの行いで受けた報いは解決までに時間がかかる。(=時間はかかるが時が解決してくれる)

    腹のふくれた狐(イソップ寓話)
    イソップ寓話の教訓No.24「腹のふくれた狐」
  • イソップ寓話の教訓No.17「尻尾のない狐」

    ストーリー

    狐が罠にかかってしっぽを切り取られた。

    生きているのも恥ずかしく辛いので、他の狐も同じようにしてやろうと考えた。みんなを同じ目に遭わせて自分のボロを隠そうと考えたのだ。

    こうして全員を集めると、こんなものは不細工なだけでなく、余計で重いものをつけていることになると言って、しっぽを切るように勧めた。

    すると中の一匹が言うには、

    「おいおい、もしそれがお前に都合の良いことなら、わざわざ勧めないだろう!」

    本当に得になる話は他人に話さない。

    尻尾のない狐の画像
    イソップ寓話の教訓No.17「尻尾のない狐」
  • イソップ寓話の教訓No.14「家柄を競う狐と猿」

    ストーリー

    旅の道連れとなった狐と猿が、家柄を競い合った。

    双方が言い合っているうちに墓地にさしかかると、猿は一点を見つめてシクシク泣き出した。

    狐がその訳を聞くと、猿はお墓を指しながら

    「ご先祖さまが解放した奴隷や使っていた奴隷の墓をみたら、泣かずにはいられない!」

    と言った。それに対して狐は

    「好きなだけ嘘をつけばいい。生き返ってお前に文句を言うものは誰もいないだろうからな!」

    誰も知らないと思って嘘をついても、感づかれて信用を落とすのが落ちだ。

    家柄を競う狐と猿の画像
    イソップ寓話の教訓No.14「家柄を競う狐と猿」
  • イソップ寓話の教訓No.5  「借金のあるアテネ人」

    誇張された情報

    ストーリー

     金貸しから金を借りた男が返済を迫られた。 
     今は手持ちの金が無いと言って、支払いを待ってもらえるように頼んだが、承諾してもらえなかった。仕方なくたった一頭しかいない豚を連れて来て、金貸しの立ち合いのもとで売ることにした。   
     買い手がやって来て「この豚はよく仔を生むか?」と尋ねるので、男は「ただ生むだけじゃないぞ。デメテルの密儀にはメス豚を、パナテナイア祭にはオス豚を生むのだ」と答えた。
     買い手がこの話に驚いていると、金貸しも横から口をはさんで言った。
    「なあに、驚くのはまだ早いぞ。この豚はディオニュソスの祭りには、仔山羊だって生んでくれますよ。」

    デメテル(農業の女神)
    パナテナイア祭(アテナに捧げる祭り)
    ディオニュソス(酒と狂気の神)

     返済に窮した男は、唯一の資産である豚を売るという切羽詰まった状況に追い込まれる。その苦しさから「神話的な繁殖力」という荒唐無稽な幻想を語り、現実を誤魔化そうとする。買い手は驚くが、冷静に考えればありえない話である。
     さらに金貸しが「この豚は仔山羊も生む」と口をはさむことで、話は完全に笑い話へと転じる。
     この寓話は、現代のビジネスにも通じる。都合の良い投資話や、売り急ぎの商品など、誇張された情報に惑わされる場面は少なくない。
     たとえ自分が欲しいと思うものであっても、冷静に事実を見極める力が必要ではないだろうか。誇張の裏にある「切迫した事情」や「売り手の都合」に目を向けることが、健全な判断につながる。

    ※類似の教訓
    イソップ寓話の教訓No.28「食わせ者」
    http://イソップ寓話の教訓no-28「食わせ者」
    イソップ寓話の教訓No.34「出来ないことを約束する男」
    http://イソップ寓話の教訓no-34出来ないことを約束する

  • イソップ寓話の教訓No.403 「猟師と犬」

    見せかけの善意

     猟師が目の前を通り過ぎる犬を見て、次々と食べ物を与えた。それに答えて犬は言った。
    「そんなに良くされると、かえって怖い!」

  • イソップ寓話の教訓No.391 「船主と船乗り」

    大きな損害を避けるために、目の前の小さな損害を選ぶ勇気!

    ストーリー

     船主があるとき海に出たところ、大変な嵐に会ってしまった。
     船乗りは、嵐のため(船が転覆しないように)漕ぐ手を緩めたところ、船主は「おい、お前たち、船をもっと早く漕がないと石を投げるぞ!」と言った。
     それに対し船乗りは答えた。「石が拾えるところに居たい!」

     大きな損害(転覆)を避けるためには、目の前の小さな損害(到着の遅れ)をあえて選択しなければならない時がある。
     これは単なるリスク回避ではなく、長期的な視野と倫理的判断に基づいた戦略的な選択だ。
     現代の組織や社会においても、同様の場面は頻繁に現れる。納期を守るために安全基準を無視する、短期的な成果を求めて長期的な信頼を損なう、上司の命令に従うことで現場の知恵を封じる——こうした選択は、目先の利益を優先するあまり、取り返しのつかない損害を招くことがある。
     だからこそ「何を守るべきか」「何を犠牲にすべきか」という問いに対して、構造的・倫理的な優先順位を持つべきであろう。
     船乗りの「石が拾えるところに居たい!」という言葉は、単なる反抗ではなく、命を守るための知恵と、支配に対する静かな抵抗である。

    イソップ寓話の教訓No.149「ライオンと驢馬と狐」の続き・・・

     驢馬はメンタル不調により半年間の休職を余儀なくされ、回復の兆しが見えたものの、残り3か月は無給となる状況に直面した。生活費の蓄えはあるが、社会保険料や税金の支払いが重くのしかかり、経済的な不安が募る。さらに、休職の原因となったライオン上司のハラスメントや、狐課長の冷淡な態度が頭をよぎり、職場への復帰に対する抵抗感も強かった。
     そんな中、驢馬は転職先の求人を見つける。給与は現職と同等で、何よりもハラスメント加害者と顔を合わせずに済むという点が魅力的だった。無給期間も発生せず、経済的な不安も解消される。心が揺れるのは当然だった。
     しかし驢馬は、「今だけの損得」ではなく、「長期的な安定と尊厳」を選んだ。3か月の無給という目の前の損害を受け入れ、元の職場へ復帰する道を選んだのである。その選択は、当時は苦しく、理不尽にも思えたかもしれない。
     だが半年後、ハラスメント加害者であるライオン上司と狐課長が子会社へ出向となり、職場環境は一変した。驢馬は、定年までの十数年を穏やかに働ける環境を手に入れたのだ。
     さらに驢馬が心を揺らした転職先では、ハラスメントと長時間労働による自殺者が出たことが新聞で報道された。もし驢馬がその道を選んでいたら、再び心身を壊していた可能性もある。
     短期的な利益に飛びつかず、長期的な視野で判断したことが、命と尊厳を守る結果につながったのである。

    イソップ寓話の教訓No.149「ライオンと驢馬と狐」

  • イソップ寓話の教訓No.293 「捕まった鼬(イタチ)」

    なぜ評価されないのか?

    ストーリー

     イタチを罠で捕まえた男が、縛り上げ、水の淀みで溺れ死にさせようとした。
     「ネズミやトカゲを捕らえて役に立っているのに、なんてひどいお返しをするのですか!」とイタチが抗議すると、男は・・・、
     「それは認めてやる。しかし鶏を残らず絞殺しにするなら、害のほうが大きいぞ!」

     イタチはネズミやトカゲを捕らえることで「役に立っている」と主張しますが、鶏を殺すという重大な害があるため、全体としては「有害な存在」と見なされてしまいます。
     組織や社会では善行があっても、それが悪行を打ち消すとは限らず、「全体への影響」が評価の基準になることが少なくありません。
     あなたの貢献は、誰にとっての「益」でしょうか?──そして、その陰で見過ごしている「害」は、本当に存在しないと言い切れるでしょうか?