カテゴリー: イソップ寓話

イソップ寓話にまつわる教訓を掲載

  • イソップ寓話の教訓No.69  「隣同士の蛙」

    慣れへの執着が危険を招く!

    ストーリー

     隣同士の蛙が二匹、一匹は深くて道からも遠い沼に、もう一匹は道にできた小さな水たまりに住んでいた。
     沼の蛙が水たまりの蛙に「自分のいる沼へ引っ越してきて、もっと楽しく安全な暮らしをするように、と勧めたが、
     こちらは住み慣れた場所から離れがたい、と言って従おうとしなかった。
     そしてとうとう、通り過ぎる車に轢き殺されてしまった。

     水たまりの蛙は、住み慣れた場所に安心感を抱いていた。しかしその執着が命取りとなり、より安全で豊かな選択肢を逃してしまった。「慣れ」だけを根拠に環境を選ぶと、思わぬリスクに晒される。これは職場や人間関係にも通じる話だろう。
     人間を含む多くの動物は、変化を本能的に避けようとする。現在の状況を理解している安心感があるため、よほどの不満がない限り、「失うかもしれない」という不安が変化への抵抗を生む。
     しかし、変化を拒むことで被る損失もまた大きい。慣れに甘んじることが、可能性や安全を犠牲にしていることに、もっと敏感であるべきではないだろうか。

    ※類似教訓
    イソップ寓話の教訓No.70「樫と葦」

  • イソップ寓話の教訓No.9  「井戸の中の狐と山羊」

    冷静に一呼吸おいて判断力を取り戻す!

    ストーリー

     あるとき水を飲もうとして井戸に落ちた狐が、そこから出ることができず、しかたなくそこでじっとしていた。
     そこへ、のどが渇いた山羊がやって来て狐を見つけると「おーぃ、狐さん!井戸の水はおいしいかい?」と尋ねた。狐は水をほめちぎり「冷たくておいしい水だよ!山羊さんも下りてきて一緒に飲もうよ!」と山羊にも下りて来るように勧めた。
     山羊は水が飲みたい一心で、後先のことも考えず、喜んで井戸の中へ飛び降りたが、水を飲み終わると、狐と共に上り方を考え始めた。
     すると狐は二人が助かるための妙案を思いついた、として言うには「君が前足と角を壁にもたせ掛けてくれたら、僕が君の背中を駆けのぼって、君を引っ張り上げよう!」
     山羊が狐のこの妙案に、喜んで従ったところ、キツネはヤギの背中から角へと駆けのぼり井戸から出ると、そのまま「さよなら」をしようとした。山羊が「約束が違う!」と文句を言うと狐は振り返ってこう言った。
     「山羊さん、あなたに顎鬚ほどの思慮があったら、上り方を考えるまでは下りてこなかったろうに」

     山羊は「水が飲みたい」という目先の欲求に囚われ、「冷たくておいしい水だよ」という耳障りの良い言葉に判断力を鈍らされた。その結果、狐の策略に利用され、搾取される立場に陥った。
     これは、組織や制度が「協力」や「支援」を謳いながら、実際には一方が多くの利益を得ている構造とよく似ている。
     欲望が目の前にあると、周囲の状況が見えなくなる。事故を起こしてから気づいても、もう遅い。
     冷静に一呼吸おき、判断力を取り戻してから動く。それが、搾取されないための賢いやり方だ。

    ※類似教訓
    イソップ寓話の教訓No.43「水を探す蛙」

  • イソップ寓話の教訓No.1   「鷲と狐」

    安全圏の錯覚が、搾取を正当化する!

    ストーリー

     鷲と狐が友達になって同じ木に住むことになった。一緒に住めば友情も、より一層深まると考えたからだ。 鷲は木の一番高いところに巣を作り、狐は木の根元の茂みで子育てをすることになった。
     ところがある時、狐が餌を探しに出かけた隙に、食べ物に困った鷲は木の根元に舞い降りて狐の子供をさらって、雛と一緒になって食べてしまった。 帰ってきたキツネは事の次第を悟ったものの、飛んでいるものに仕返しの手立てがなく、上を見上げ鷲を呪っていた。  
     あるとき野原で生贄の山羊が焼かれているとき、鷲が舞い降りて火のついた肉を失敬した。 巣に持ち帰ったまでは良いが、突風が吹きつけて小枝でできている巣は一気に燃え上がった。このため、まだ羽も生えそろわない雛は焼かれ、地面に落ちてしまった。
     それを見た狐は駆け寄るなり、鷲の目の前で雛を食べてしまった。

     鷲は空を飛べるという物理的優位性を持ち、狐の子を奪っても報復されないと高を括っていた。これは、権力や制度の上位にいる者が、下位の者に対して不正を働いても「安全圏」にいると錯覚する構造に似ている。
     狐は直接的な報復手段を持たなかったが、鷲が自らの欲望によってリスクを招いたことで、構造が崩れた。制度的な不正が「外部要因」や「設計ミス」によって露呈し、下位の者に一時的な報復の機会が訪れることを象徴している。
     この寓話では狐は偶然、報復ともいえるチャンスに恵まれた。
    しかし解決すべき構造的な問題は何も解決されていない。
     学ぶべきは、「安全圏にいる思い込んでいる上位者が搾取を生まない構造をどう設計すればよいのか」と問うべきではないだろうか。

    類似教訓
    イソップ寓話の教訓No.65「旅人と熊」