その場しのぎの理論
ストーリー
蝙蝠が地面に落ちて鼬に捕まったが、今にも殺されそうになって命乞いをした。
鼬は「すべて羽根のあるものとは生まれつき戦争をしているので逃がすわけにはいかない」と言った。
そこで蝙蝠は「自分は鳥ではない。鼠だ。」と言って、逃がしてもらった。
しばらくしてまた落ちて、別の鼬に捕まったが、見逃してほしいと頼んだ。
今度の鼬は「鼠はみな仇的だ」と言ったが、自分は鼠でなく蝙蝠だと言って、またもや逃がしてもらった。
こうして蝙蝠は名前を二度変えて、生き延びたのだ。
「逃げる」という選択肢。
トラブルに柔軟に対応し、その場しのぎで切り抜けることは、特に厳しい状況下では有効な戦略となる。機転は命を守る力にもなり得る。
しかし、逃げることで一時的に問題を回避できても、それは根本的な解決ではない。
その場しのぎを繰り返す者は、そもそも問題の本質に向き合う意志を持たないのかもしれない。
いずれ、逃げ切れない局面に立たされるだろう。
この寓話は、柔軟さと誠実さの間にある緊張を問いかけている。
生き延びるために立場を変えることは賢明か、それとも不誠実か。
私たちは、どこまで自己を変えて生き延びるべきなのか――その境界線を、蝙蝠の姿に重ねて考えさせられる。
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