カテゴリー: グリム童話

グリム童話にまつわる教訓を掲載

  • グリム童話の教訓「牧童」

    機転と誠実さ!

    グリム童話「牧童」のストーリー

     昔、ある所に羊飼いの男の子がいました。この子は何を聞かれても賢い受け答えをするので、村でも評判になりました。
    このことが王様の耳に入り、子供を呼び出して、言いました。「わしはお前に問題を三つ出すぞ。それに答えができれば、わしの子供と同様にこの宮殿に住まわせ、わしのそばにおいてやる。」
    「三つの問題はどのようなものでしょうか?」と男の子が尋ねました。

     「一番目はこうじゃ。大海の中には水が何滴あるか?」と王様が尋ねました。
    「王様、地球上の川を残らず止めて、海の中に一滴も流れ込まないようにしていただきとう存じます。そう致しましたら、海の中に水が何滴あるか申し上げます」と男の子は答えました。

     「次の問題はこうじゃ。空には星がいくつあるか?」と王様が尋ねると、
     「大きな紙を一枚ください」とお願いし、紙にペンでべたいちめんに細かい点をつけました。良く見えないくらいの小さな点なので目がぼやけます。それが出来上がると男の子は「空にはちょうど、この紙に書いてある点と同じ数だけ星がございます。これを数えてみてください。」と言いました。だれも数えることができませんでした。

     「三番目の問題はこうじゃ。永劫とは何秒あるか?」と王様は尋ねました。すると男の子は、「ヒンテルポンメルンの国に金剛石の山があります。高さが一里、幅が一里、奥行きが一里ございます。百年目ごとに小鳥が一羽、山に入りくちばしを磨ぎます。このため山がすり減って、跡かたも無くなった時が、永劫の第一秒が経った時でございます」と答えました。

     王様は「よく三つの問題を解くことが出来たな。この城に住まうが良い。わしの実の子と同様にいたしてやるぞ」とお仰せになりました。

    ※牧童:牧場で家畜の番をするこども

    機転が利くものは重宝がられる。

     しかし・・・機転を利かせ、体よくいやな仕事を他人に振り、体よく楽で目立つ仕事を好んでこなし、上手に会社組織という海を泳いで出世する。このような者は、何かのタイミングで自力の無さが露見して信用を落とす。機転は誠実な人のためにあるのだ。
    ◎補足
     機転とは本来、状況を読み、最適な行動を選ぶ力。それが誠実さと結びつくと、他者への配慮・未来への責任・信頼の構築という形で現れます。逆に、誠実さを欠いた機転は、短期的な成果と長期的な破綻を招きます。それはまるで、空の星を数えようとして紙に点を打つが、その点が偽りなら意味をなさなくなる。

  • グリム童話の教訓「梁(うつばり)」

    名誉にかかわる指摘はすべきでない!

    ストーリー

     むかし一人の魔法使いがいました。魔法使いは大勢の人を集め、不思議な魔術を使って驚かせていました。
     その魔術の中に鶏に家の梁を軽々とかつがせる術がありました。ところが見物人の中に一人の女の子がいました。その女の子は四葉のクローバーを持っていたので魔術にかかることなく、鶏が担いだのは藁であることを見破りました。
     女の子は「みんな、分からないの?鶏がかついでいるのは藁だよ!」と大きな声をあげました。そのとたん魔術は消えて、見物人にありのままが見えました。
     魔法使いは見物人にさんざん悪口を言われ、これ以降、不思議な魔術を見物するものはありませんでした。魔法使いも姿をあらわさなくなりました。
     それから年月が経ち、この女の子がお嫁に行くことになりました。花嫁衣装に身を包み、大勢の行列を整えて野原をとおり、教会までねりあるいて行きました。
     ところが思いがけなく、大きな川の岸に出ましたが、橋がありません。花嫁は仕方なく衣装をまくりあげて川を渡り始めました。
     川の途中まで来ると誰かが大きな声で「花嫁が畑の真ん中で衣装をまくっているぞ!」と言いました。これは、いつぞやの魔法使いでした。
     こう言われて、花嫁がはっと気づき辺りを見回すと、衣装をお尻までまくって麻畑の真ん中に立っているのでした。

    ※四葉のクローバー:これを持っていると魔術を見破ることができると言われていました。

     名誉にかかわる指摘はすべきでない。名誉を汚されたと感じれば相手も容赦はない。わざわざトラブルを招くような愚かな事はやめよう。トラブルに合わないようにするのは自分次第である。

  • グリム童話の教訓「狼と山羊」

    悪意から生まれたものは悪意を帯びている!

    ストーリー

     天の神様があらゆる動物を創り狼を自分の家来に選んだが、山羊だけを忘れてしまった。するとそれを見ていた悪魔が自分も創ってみようと思い、尻尾の長い山羊を創った。
     ところが山羊は牧場へでると、いつでも尻尾が草か何かにひっかり動けなくなるので、その度に山羊をひっかりから解いてやらねばならなかった。とうとう悪魔はめんどうになり、山羊の尻尾を噛みきってしまった。
     それからは山羊にかってに草をたべさせておいたが、ある時、神様が山羊を見ると木をかじったり、収穫前の葡萄を食べてしまってだいなしにしていた。神様は自分の家来の狼を山羊にけしかけ、たちまち八つ裂きにしてしまった。
     これを聞いた悪魔は、神様に言った「あなたの狼がわたしの山羊を八つ裂きにしてしまわれた」
     神様は尋ねた「お前は、なんで、あのような害をなすものを創ったのだ?」
    「わたしが害をなすことを心掛けておりますので、わたしが創ったものは同じ性質を持つのです。よその木や葡萄を食べないようにたっぷりと餌を与えねばなりません。それにはたくさんのお金を頂けなければなりません。」と悪魔は答えた。
    「わかった。槲(カシワ)の葉が枯れ落ちたら、すぐ参れ。用意しておく。」と神様は言った。
     槲(カシワ)の葉が落ちたのを見ると、悪魔は神様のもとへのこのやって来て、お金を頂きたいと申し出た。ところが神様は「コンスタンティノープルのお寺にある槲(カシワ)には、まだ葉がいっぱいついておるぞ。」と言った。悪魔はぶつぶつ悪態をつきながらコンスタンティノープルのお寺にある槲(カシワ)の葉が落ちるのを見ると戻ってきました。ところが帰って来た時には、他の槲(カシワ)がいっぱい葉をつけているのでした。
     とうとう悪魔もいただくはずのお金に見切りをつけ、山羊に与える餌をあきらめた。
     それから、山羊は木や作物をかじり、尻尾が短く、悪魔の目を持っていると言われます。

    ※ コンスタンティノープル:トルコ共和国のイスタンブールのヨーロッパ側旧市街の半島部分にあった都市。
    ※狼:ユーラシア大陸と北アメリカに生息する大型のイヌ属。物語に登場する狼は凶暴さを象徴している。
    ※山羊:キリスト教文化において、ヤギには悪魔の象徴としてのイメージが強い。

     凶暴な狼も作物をかじる山羊もありのままに生きている。動物に善悪など無く本能のとおり誠実に生きている。
     自分に害を与えるものは悪であり、自分に得を与えてくれるものは善である、と善悪を判断することは自分勝手な考えだ。
     但し、創造には責任が伴い、また、悪意から生れたものは、悪意を帯びている事をお忘れなく。

  • グリム童話の教訓「悪魔と悪魔のおばあさん」

    内なる悪魔との闘い!

    ストーリー

     むかし大きな戦争があって、王様はたくさん兵隊を抱えていました。ですが給料は少ししか出されず、生活に困った兵隊が三人で脱走をはかりました。

     他の兵隊たちには見つからないように大きな麦畑に隠れていましたが、軍隊はいつになっても 麦畑の周りから動きません。
     二日二晩、麦畑の中で頑張っていましたが、脱走した三人は、空腹で死にそうでした。といって、麦畑から出れば捕まって罰を受けることになります。

    「せっかく脱走したのに、何にもならない。このまま野垂れ死にだ。」と話し合っているところへ、火の竜が飛んできて「お前たちは、なんでこんなところに隠れているんだ?」とわけを聞きました。
     ことの次第を知った竜は「おれに7年のあいだ奉公する気があるなら、ここから助け出してやる」と言いうと、兵隊たちは竜の条件を承知して助け出されました。

     竜は三人の兵隊に小さな鞭を渡して「この鞭を振れば好きなだけのお金が目の前に現れる。どんな贅沢な暮らしもできる。好きなように暮らしたら良い。ただし7年たったら、お前たちの命は俺のものになるだ」と言いました。竜は続けて「お前たちにチャンスをやろう。お前たちの命をもらう前に謎を一つ出してやる。それが解けたら命は取らないから覚えておけ。」こう言って、竜は飛び去りました。
     兵隊たちは鞭を持って旅を続けました。鞭のおかげでお金に困らず、馬や馬車を乗り回し、ごちそうやお酒を好きなだけ食べ、贅沢三昧の暮らしができました。

     あっという間に7年の月日が経とうとするある日、三人は原っぱに座っていました。そこへ、どこかのおばあさんがやって来て、どうして、こんなところに座っているのか尋ねました。兵隊たちは7年の間、悪魔の召使になっていること、お金も自由に使えるけれど、7年たった時に悪魔の謎かけが答えられなければ、命をとられてしまうことを、おばあさんに話して聞かせました。
     すると、おばあさんは「森へ行くと、岩が崩れ落ちて小屋のように見えるところがある。そこへ入って行くとお助けがあると言われているよ」と教えてくれました。
     三人の兵隊は「そんなことしたって助かるわけがない」と思っていましたが、一人が無駄でも森へ行って行ってみようと、出かけて行きました。

     しばらく森の中を歩いていると、話に聞いた岩の小屋が見つかりました。こっそり中をのぞくと、おばあさんが一人で座っていました。外から声をかけようとしたその時、あの時の竜がこの小屋をめがけ飛んできたのが見えたので、慌てて物陰に隠れました。

     竜が岩の小屋の中に入って来ると、おばあさんは竜に尋ねました「今日はどうだった?魂はいくつ取れたのだい?」
     竜は答えて「さっぱりうまくいかなかった。だが兵隊を三人捕まえてあるから、あいつらの命は頂きだ!謎を一つ出してやるが、答えられっこないだろう。」
    「どんな謎だい?」とおばあさんが聞くと、竜は「北海の水の中に死んだ牝の猿が一匹いるので、これを奴らの焼肉にして食わせるのさ。さじはクジラのあばら骨で作り、酒のコップは馬の足首だ。」
     この話を物陰で聞いていた兵隊は、大急ぎで仲間の所へ帰り話して聞かせました。

     ちょうど7年たった日に竜がやって来て「お前たちを地獄へ連れていくぞ。そこで腹いっぱい焼肉を食わせてやる。その肉がなんの肉か、ここで当てることができたら見逃してやる」と言いました。すると一人が「 北海の水の中に死んだ牝の猿が一匹いてそれが焼肉なんだろう」と言うと、竜は機嫌を悪くして「それでは、お前たちが使うさじはなんだ?」と聞くと、「クジラのあばら骨を俺たちのさじにしようとしているだろう」、竜は何かおかしいぞと疑うように唸りながら、「それでは、お前たちの酒のコップはなんだ?」と聞くと、「馬の足首をコップにしようとしているだろう」

     これを聞くと竜は大きな唸り声をあげながら飛んで行きました。こうして三人の兵隊は竜に命をとられずに済んだということです。

    :悪魔が姿をかえたもの(グリム童話では悪魔が姿を変えて希望を失った人の前に現れ、人を堕落させるような条件をだし、その対価として安楽を与える話が多い)

    :鞭を振るだけで好きなだけお金が出てくる。楽してお金を手にすることで人として堕落するように悪魔は仕向けている。それが7年も続くと普通の暮らしには戻れず、結局は命も続かないという悪魔の狙い。

    :グリム童話では悪魔や魔法使いの住処がある。

    辛いことから逃げ出したい時がある。安易な道を選びたい時がある。きっと自分の中の悪魔がささやいているのだ。
    逃げちゃえ!、止めちゃえ!嘘をついちゃえ!自分の中の悪魔に勝てるかどうか、自分次第である。

  • 星の銀貨(グリム童話)

    善行の報酬は「物質」ではなく「安心」だ!

    ストーリー

     むかし昔、ある所に貧しい女の子がいました。今日は情け深い人にもらったパンを一つ手にもっているだけです。
     女の子が野原へ行ったところ、みすぼらしい男の人が「お腹がペコペコです。何か食べ物をください」と言いました。
     女の子はその人にパンを丸ごと渡すと「神様のお恵みがございますように!」と言ってさっさと行ってしまいました。
     すると、今度は子供がやって来て、めそめそと「寒くてしかたがない、上着をくださいな」と言いました。この子供は体が凍り付いたように冷たかったので、女の子は自分の上着をあげました。
     辺りも暗くなり、女の子は寒さに震えながら行く当てもなくたたずんでいると、いきなり空から星が降ってきました。しかも、それが地面に落ちた時にはピカピカ光った銀貨になっていました。
     気が付くと子供にあげた上着もちゃんと新しいものを着ていて、それも上等なものでした。
     降ってきた銀貨のおかげで、女の子はなに不自由なく暮らすことが出来たということです。

     相手へ思いやりは必ず自分に返ってくる。つまり思いやりは相手のためだけでなく自分のためでもある。善行の報酬は「物質」ではなく「安心」であることにも気づいてほしい!

  • ハンスと三毛猫(グリム童話)

    粉ひき小屋の奉公人が魔法の御殿でまじめに働き王女と結婚する話

    ストーリー

     ある粉ひき小屋に、おじいさんと三人の奉公人がいました。おじいさんには家族がないので、三人の奉公人の誰かに、この粉ひき小屋を譲ろうと考えました。
     そこで、おじいさんは言いました「お前たち、旅に出なさい。みやげに一番良い馬を持ち帰ったものに、この粉ひき小屋を譲ろう!」

     三人は旅に出ました。夜になったので洞穴を見つけ、その中へ入ってごろ寝しました。朝になって三人の中で一番年下のハンスが目を覚ますと、他の二人の姿はありません。洞穴の中においてかれたのでした。
     ハンスは洞穴を出ると森へ入って行きました。一人でとぼとぼ歩いていると、三毛猫が声をかけてきました「ハンスさん、あなたが欲しいものはわかっていますよ。私の召使になって7年働きなさい。そうすれば立派な馬を一頭あげますよ。」

     三毛猫はハンスを魔法の御殿へ連れて行きました。
    それからというもの三毛猫の言いつけどおり毎日毎日、朝から晩まで仕事をしました。
    ちょうど7年たったころ、三毛猫は約束の馬をハンスに見せて言いました「うちへお帰り!馬は三日たったら私が届けてあげるよ。」

     ハンスが家に着いてみると、他の二人の奉公人も戻っていました。二人とも馬を連れて来たには来たのですが、一頭は目が見えず、もう一頭は脚が不自由でした。
     二人の奉公人はハンスに「お前の馬はどうした?」と尋ねるので、ハンスは答えて「三日たつと、後からやってくるよ。」
     これを聞いた二人は大笑いでハンスをバカにしました。おじいさんもハンスの身なりが汚いので、動物小屋に住まわせることにしました。

     三日たった朝、六頭立ての馬車が粉ひき小屋の前でとまり、きらびやかな王女が降りてきました。王女は粉ひき小屋のおじいさんに「ハンスにあげる馬を連れてきました。ハンスはどこですか?」と尋ねると、ぼろぼろの服を着たハンスが動物小屋から出てきました。
     それを見た王女は「馬はここにおいていきます」と言い、ハンスを馬車に乗せ行ってしまいました。
     その後、王女とハンスは婚礼をあげ、お金も生涯こまることがなかったそうです。

    教訓
    必ず誰かが見ていて、行動に応じた評価が返されます。良いことも悪いことも見られていることを忘れずに!

    ハンスと三毛猫(グリム童話)
    ハンスと三毛猫(グリム童話)