グリム童話の教訓「悪魔と悪魔のおばあさん」

三人の兵隊が軍隊を脱走するために悪魔と取引した話

ストーリー

 むかし大きな戦争があって、王様はたくさん兵隊を抱えていました。ですが給料は少ししか出されず、生活に困った兵隊が三人で脱走をはかりました。

 他の兵隊たちには見つからないように大きな麦畑に隠れていましたが、軍隊はいつになっても 麦畑の周りから動きません。
 二日二晩、麦畑の中で頑張っていましたが、脱走した三人は、空腹で死にそうでした。といって、麦畑から出れば捕まって罰を受けることになります。

「せっかく脱走したのに、何にもならない。このまま野垂れ死にだ。」と話し合っているところへ、火の竜が飛んできて「お前たちは、なんでこんなところに隠れているんだ?」とわけを聞きました。
 ことの次第を知った竜は「おれに7年のあいだ奉公する気があるなら、ここから助け出してやる」と言いうと、兵隊たちは竜の条件を承知して助け出されました。

 竜は三人の兵隊に小さな鞭を渡して「この鞭を振れば好きなだけのお金が目の前に現れる。どんな贅沢な暮らしもできる。好きなように暮らしたら良い。ただし7年たったら、お前たちの命は俺のものになるだ」と言いました。竜は続けて「お前たちにチャンスをやろう。お前たちの命をもらう前に謎を一つ出してやる。それが解けたら命は取らないから覚えておけ。」こう言って、竜は飛び去りました。

 兵隊たちは鞭を持って旅を続けました。鞭のおかげでお金に困らず、馬や馬車を乗り回し、ごちそうやお酒を好きなだけ食べ、贅沢三昧の暮らしができました。

 あっという間に7年の月日が経とうとするある日、三人は原っぱに座っていました。そこへ、どこかのおばあさんがやって来て、どうして、こんなところに座っているのか尋ねました。兵隊たちは7年の間、悪魔の召使になっていること、お金も自由に使えるけれど、7年たった時に悪魔の謎かけが答えられなければ、命をとられてしまうことを、おばあさんに話して聞かせました。

 すると、おばあさんは「森へ行くと、岩が崩れ落ちて小屋のように見えるところがある。そこへ入って行くとお助けがあると言われているよ」と教えてくれました。
 三人の兵隊は「そんなことしたって助かるわけがない」と思っていましたが、一人が無駄でも森へ行って行ってみようと、出かけて行きました。

 しばらく森の中を歩いていると、話に聞いた岩の小屋が見つかりました。こっそり中をのぞくと、おばあさんが一人で座っていました。外から声をかけようとしたその時、あの時の竜がこの小屋をめがけ飛んできたのが見えたので、慌てて物陰に隠れました。

 竜が岩の小屋の中に入って来ると、おばあさんは竜に尋ねました「今日はどうだった?魂はいくつ取れたのだい?」
 竜は答えて「さっぱりうまくいかなかった。だが兵隊を三人捕まえてあるから、あいつらの命は頂きだ!謎を一つ出してやるが、答えられっこないだろう。」
「どんな謎だい?」とおばあさんが聞くと、竜は「北海の水の中に死んだ牝の猿が一匹いるので、これを奴らの焼肉にして食わせるのさ。さじはクジラのあばら骨で作り、酒のコップは馬の足首だ。」
 この話を物陰で聞いていた兵隊は、大急ぎで仲間の所へ帰り話して聞かせました。

 ちょうど7年たった日に竜がやって来て「お前たちを地獄へ連れていくぞ。そこで腹いっぱい焼肉を食わせてやる。その肉がなんの肉か、ここで当てることができたら見逃してやる」と言いました。すると一人が「 北海の水の中に死んだ牝の猿が一匹いてそれが焼肉なんだろう」と言うと、竜は機嫌を悪くして「それでは、お前たちが使うさじはなんだ?」と聞くと、「クジラのあばら骨を俺たちのさじにしようとしているだろう」、竜は何かおかしいぞと疑うように唸りながら、「それでは、お前たちの酒のコップはなんだ?」と聞くと、「馬の足首をコップにしようとしているだろう」

 これを聞くと竜は大きな唸り声をあげながら飛んで行きました。こうして三人の兵隊は竜に命をとられずに済んだということです。

:悪魔が姿をかえたもの(グリム童話では悪魔が姿を変えて希望を失った人の前に現れ、人を堕落させるような条件をだし、その対価として安楽を与える話が多い)

:鞭を振るだけで好きなだけお金が出てくる。楽してお金を手にすることで人として堕落するように悪魔は仕向けている。それが7年も続くと普通の暮らしには戻れず、結局は命も続かないという悪魔の狙い。

:グリム童話では悪魔や魔法使いの住処がある。

辛いことから逃げ出したい時がある。安易な道を選びたい時がある。きっと自分の中の悪魔がささやいているのだ。
逃げちゃえ!、止めちゃえ!嘘をついちゃえ!自分の中の悪魔に勝てるかどうか、自分次第である。

悪魔と悪魔のおばあさん(グリム童話)
グリム童話の教訓「悪魔と悪魔のおばあさん」

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