イソップ寓話の教訓No.378 「二つの壺」

被害を受けないために!

ストーリー

土の壺と金属の壺が一緒に川を下っていた。

土の壺が金属の壺に向かって言った。

「あまり近寄らないでくれ。君が僕にぶつかたら、僕は壊れてしまうんだ!」

 独善的な権力者のもとでは、いつも被害を受けるのは弱い者だ。
 権力者が自分の価値観だけを「正義」として押し通すとき、他者の尊厳や限界は無視され、搾取がすました顔で行われる。

 サービス提供の現場でも、こうした構造は見られる。
 「顧客は神様」という文化のもとでは、サービス提供者が常に下位に置かれ、顧客の要求が絶対視される。
 「お金を払っているんだから当然だ」という理屈が、提供者の人間性や限界を踏みにじる言動を正当化してしまう。
 このような場面に心当たりはないだろうか。顧客が独善的な権力者のように振る舞い、価値観や都合を一方的に押しつけてくる。そのとき、提供者が「自分を守るために距離を取る」という選択は、逃避ではなく倫理的な自己防衛である。
 これは、壊れやすい土の壺のような存在が、自らの形を守るために距離を取るという話だ。
 壺は「触れるなら敬意を持って」と静かに語る。乱暴に扱われれば割れてしまう。だからこそ、あえて他人行儀で距離を保つことが、尊厳を守るための正しい行動なのだ。
 境界線を引くことは、関係を断つことではない。
 それは、関係の中で自分の尊厳を保ち、搾取を許さないための構造的な再設計である。
そしてその選択は、弱さではなく、壊れやすさを知る者の強さだ。

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