怒りの代償!
ストーリー
葡萄畑や果樹園を荒らしまわる狐を、懲らしめてやろうと思った男が、狐の尻尾に火をつけてやった。
ところが神様がこれを見ていて、尻尾が燃えている狐を男の畑へと導いた。
おりしも収穫の季節で麦は豊作であったが、畑の麦に火が付いて燃えだした。
男は、これまでの苦労を思い狐を捕まえようと追いかけた。しかし男の畑に穀物の女神がほほ笑むことは無かった。
男は狐に対して「畑を荒らした懲罰」として火をつけましたが、その火が自分の畑を焼き、豊作を台無しにしてしまいました。
これは、感情的な制裁が、理性や計画を超えて自分の成果を損なうことがあるということを示しています。
神様が狐を男の畑へ導いたという描写は、自然や神の視点から見た「バランスの回復」とも読めます。つまり、過剰な罰は宇宙の秩序によって是正されるという思想です。
男は怒りを優先したことで、長年の努力を失いました。これは、成果を守るには冷静さと戦略が不可欠であることを教えています。
この寓話は「理不尽な相手に制裁を加えたい」と思ったときにこそ、思い出してほしいと願う教訓です。
事例・・・怒りの代償・・・
X社の経理課に勤めるA君は、経理業務の効率化を目的に、Y社へ新しいシステムの開発を発注していた。担当エンジニアはY社のB君。納品されたシステムにはいくつか改善すべき点があり、A君はそれを丁寧に洗い出し、B君に修正を依頼していた。
しかし、B君は複数の取引先を抱えており、すぐに対応することができない状況だった。
一方、A君は社内で進捗を問われ続け、上司とB君の間で板挟みになる日々が続いていた。改善依頼からすでに半年が経過し、B君の反応の鈍さに、A君のフラストレーションは限界に達していた。
その日も上司から厳しく詰められたA君は、帰り道に気晴らしの夕食とビールを楽しんだ。酒が回ったこともあり、「あと1回だけ電話して様子を聞こう、出なかったら今日は諦めよう」と、半ば投げやりな気持ちでB君に電話をかけた。
すると、偶然にもB君が電話に出た。声を聞いた瞬間、A君の怒りは爆発。これまでの不満を一気にぶつけ、大声で怒鳴り散らした。
居留守を使い電話に出なかったこと、依頼した対応が非常に遅かったこと──積もり積もった鬱憤を、感情のままにまくしたてた。
翌朝、A君は「少しやりすぎたな」と昨晩の言動を悔いながら出社した。すると上司に呼ばれ、こう告げられる。
「昨晩、君との電話のあと、Y社のB君が行方不明になったそうだ。Y社からは取引中止の申し入れがあり、さらに君を訴えるために弁護士と相談しているそうだよ。」
それを聞いた瞬間、A君の頭の中は真っ白になった──。
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