イソップ寓話の教訓No.5  「借金のあるアテネ人」

誇張された情報

ストーリー

 金貸しから金を借りた男が返済を迫られた。 
 今は手持ちの金が無いと言って、支払いを待ってもらえるように頼んだが、承諾してもらえなかった。仕方なくたった一頭しかいない豚を連れて来て、金貸しの立ち合いのもとで売ることにした。   
 買い手がやって来て「この豚はよく仔を生むか?」と尋ねるので、男は「ただ生むだけじゃないぞ。デメテルの密儀にはメス豚を、パナテナイア祭にはオス豚を生むのだ」と答えた。
 買い手がこの話に驚いていると、金貸しも横から口をはさんで言った。
「なあに、驚くのはまだ早いぞ。この豚はディオニュソスの祭りには、仔山羊だって生んでくれますよ。」

デメテル(農業の女神)
パナテナイア祭(アテナに捧げる祭り)
ディオニュソス(酒と狂気の神)

 返済に窮した男は、唯一の資産である豚を売るという切羽詰まった状況に追い込まれる。その苦しさから「神話的な繁殖力」という荒唐無稽な幻想を語り、現実を誤魔化そうとする。買い手は驚くが、冷静に考えればありえない話である。
 さらに金貸しが「この豚は仔山羊も生む」と口をはさむことで、話は完全に笑い話へと転じる。
 この寓話は、現代のビジネスにも通じる。都合の良い投資話や、売り急ぎの商品など、誇張された情報に惑わされる場面は少なくない。
 たとえ自分が欲しいと思うものであっても、冷静に事実を見極める力が必要ではないだろうか。誇張の裏にある「切迫した事情」や「売り手の都合」に目を向けることが、健全な判断につながる。

※類似の教訓
イソップ寓話の教訓No.28「食わせ者」
http://イソップ寓話の教訓no-28「食わせ者」
イソップ寓話の教訓No.34「出来ないことを約束する男」
http://イソップ寓話の教訓no-34出来ないことを約束する

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