イソップ寓話の教訓No.32  「人殺し」

人殺し

 人を殺した男が、相手の身内に追われていた。
 ナイル川のほとりまで来たところ、狼と鉢合わせして、恐ろしくて川辺に生える木に登り、身を潜めていた。
 すると毒蛇が頭上で口を開けている。
 そこで川に飛び込んだところ、ワニが待ち受けていて、人殺しを食べてしまった。

 この寓話は、「逃げることで解決しようとする者が、かえって破滅に向かう」という深い洞察を含んでいる。
 ニュースでも耳にしたことがあるだろう。不正会計による利益の水増し、検査データの偽造、貸金庫の窃盗事件など——これらは、不正を見逃す仕組みが長い時間をかけて組織内に構築され、発覚を恐れて不正が繰り返される構造的な病理である。やがて、静かに蓄積された歪みは、ある日突然、大爆発を起こす。
 組織においては、不正が一時的に成功したように見えても、構造的な力学が真実を暴き出す。
 プレッシャーという見えない狼から逃げるために、ゆめゆめ不正に手を染めてはならない。
因果応報は、静かに、しかし確実に、時間をかけて追ってくるのだ。

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