犠牲者は出さないほうが良い!
ストーリー
農夫が嵐のために小屋に閉じこめられた。外に出て食物を手に入れることができないので、まず羊を食べた。
しかし嵐はなおも続くので、やむなく山羊も平らげた。
それでも一向に嵐の収まる気配が無い。とうとう三番目には畑を耕す牛にまで手を付けた。
一部始終を見ていた犬たちは、こう言い合った。
「早くここを出て行こう!ご主人は一緒に畑仕事をする牛さえ容赦しなかったんだ。次は俺たちの番だぞ。」
他者を犠牲にして得た安堵は、長くは続かない。犠牲を目撃した者は、次に狙われるのは自分だと察知し、信頼を手放す。
組織を維持したければ、犠牲者を出すのではなく、共存の原則を守ることだ。
共存が搾取に変わった瞬間、忠誠は恐怖に変わり、協力は離反へと転じる。
**************************ある組織の出来事*************************
若手社員のAが心の中で思っていた。
「ベテランがいつまでも管理職に居座っているからポストが空かないんだ。だから自分たちが出世できないんだ!」
ある時、景気が悪くなりリストラが始まった。対象になったのはベテラン社員たちだ。
Aの課ではリストラされたベテラン社員の送別会が開かれた。次の就職先が決まらなかったり、決まっても収入が大幅に下がってしまったり、と困っている様子だった。
送別会の帰り際に、会社を去るベテランがAにささやいた。「この歳でリストラはキツイよ。君たちは先が長いからまだ安心だ!だが君たちも、いずれ歳をかさねてベテランになる。このリストラもいずれ君たちが行く道だよ。」このリストラのあと優秀な若手社員も何人か会社を去っていった。
翌春、Aは管理職になった。だがその椅子は、誰かの犠牲の上に築かれていた。喜びは、いずれ自分にも訪れるかもしれない同じ運命への不安と、静かに胸を刺す罪悪感にかき消された。
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