相手の立場を理解する
狐と鶴
いじわるな狐が鶴を食事に招待した。やって来た鶴に狐は、たいらな皿にスープを入れて差し出した。鶴はくちばしが長いので、平らなお皿ではスープを飲むことが出来ず、ご馳走になるどころか、笑いものになってしまった。
今度は鶴が狐を食事に招待した。訪れた狐に、細長い瓶に食べ物を入れて差し出した。狐は細長い瓶に入った食べ物を食べることが出来ず、鶴はそれを見ながら、おいしそうに食べた。
これは有名なイソップ寓話「狐と鶴」の話です。「相手の立場を理解せずに行動すると信頼や友情を失う」というメッセージが込められています。
なぜ相手の立場を考えることが重要なのでしょうか。相手の状況や制約を理解しようとする姿勢は誠実さの証であり、最適な方法を選ぶことで安心感と信頼が生まれます。
組織における制度設計も同じです。人事制度は給与・昇給・評価の仕組みを定め、従業員のモチベーションや人材育成を支えるものですが、設計者の都合だけでは機能せず、従業員の立場を考えることが不可欠です。
ノーレイティング制度やリアルタイムフィードバックはその好例です。前者は従業員をランク付けせず、日常的な対話で成長を支援する仕組み。後者は半年や年1回の評価ではなく、日常業務の中で即時に助言を行う仕組みです。これらはリモートワークやフレックス勤務、副業兼業など多様な働き方に柔軟に対応できるとされています。
一方で、評価が曖昧になりやすい、上司の負担が増えるといった課題もあります。だから制度設計では、管理者と従業員のそれぞれの立場を理解し、双方にとって納得できる「器」を作ることが重要です。
これらの人事制度はまだ多数派ではありませんが、働き方の多様化に対応するため今後さらに導入が進むでしょう。寓話「狐と鶴」が示すように、管理者都合の器では信頼を失い、従業員視点の器こそ柔軟で持続的な制度設計につながるのです。
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