イソップ寓話の教訓No.55 「女主人と召使」

安易な対応は深みにはまる

ストーリー

 働き者の未亡人が下女を使い、いつも彼女らを雄鶏の時に合わせて、夜の暗いうちから仕事へとたたき起こしていた。
 下女たちは休む間もなく働かされるので「この家の雄鶏を絞め殺せば、もう少し寝ていられる!」と思いついた。
 夜中に女主人を起こす、この雄鶏こそ、自分たちの不幸の原因だと考えたのだ。
 ところが、いざ実行してみると、以前にも増して辛い目を見ることになった。
 雄鶏の告げる時が分からなくなった女主人は、もっと暗いうちから下女たちを起こすようになったのだ。

 休む間もなく働かされる原因は、女主人の勤勉さと厳しい労働管理が根本原因であり、雄鶏は単なる“時を告げる道具”にすぎない。
 しかし、下女たちは、それを排除すれば楽になると表面的な原因に惑わされ、構造的な問題を見抜く力が欠如していた。 
 これは、表面的な象徴(雄鶏)に怒りを向けることで、真の権力構造(女主人の労働方針)を見逃してしまう事への警鐘を意味している。
 これは、現代の職場や社会制度にも通じる。たとえば、過剰な業務や不公平な待遇の原因を「ツール」や「ルール」に求めるだけでは、根本的な改善には至らない。本当に変えるべきは、運用する人間の意識や制度設計そのものだ。
 まさに「見誤った敵を倒しても、支配の仕組みは変わらない」という示唆を認識してもらいたい。

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