イソップ寓話の教訓No.226 「亀と兎」

成長のジレンマ

亀と兎

 亀と兎が足の速さで言い争い、勝負の日時と場所を決めて別れた。
 兎は生まれつき足が速いので、真剣に走らず道から外れて眠り込んだが、亀は自分の歩みが遅いことを知っているので、地道に歩き続け、兎が居眠りしている横を通り過ぎ、勝利のゴールに到着した。

 生まれつき速い足を持つ兎は、競走の途中で慢心して眠ってしまう。しかし、自分の遅さを理解している亀は、地道に一歩一歩進み続け、その結果、油断した兎を追い抜き勝利を収める。この寓話は「素質よりも誠実な努力」という普遍的なテーマを伝えています。

 組織も同じです。急速に契約を増やせば、人員や仕組みが追いつかず、品質低下を招きます。これが続けば人員は疲弊し、離職が増え、残された人の負担がさらに重くなる。やがて顧客離れが加速し、組織全体が負の連鎖に陥るのです。

 この連鎖を断ち切るには、小さくても確実に改善が波及する起点を選ぶことが重要です。例えば、契約ペースを調整し無理な受注を避けることは、勇気のいる判断ですが、長期的には信頼維持につながります。

 しかし現実には、「契約数の目標」が課されるため、現場の管理監督者が契約ペースを調整するのは難しい構造になっています。こうして疲弊 → 離職 → 負担増 → 品質低下 → 顧客離れ → 更なる圧力という循環が固定化され、日本企業に広く見られる典型的なジレンマとなっているのです。

 ――では、この構造をどう変えていくのか。それこそが、亀の歩みを選ぶ勇気にかかっているのではないでしょうか。

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