イソップ寓話の教訓No.175  「旅人とプラタナス」

見えない価値

ストーリー

 夏の盛りの真昼どき、旅人たちは猛暑にぐったりしていたが、プラタナスの木を見つけたので、その下の木陰にもぐり込み、横になって一息入れていた。
 そして元気を取り戻すと、プラタナスを見上げつつ「この木は人間にとって何と役立たずなんだ、実もつけないし」と言い合った。
 するとプラタナスが遮って言った。
 「この恩知らずめ!木陰という私の恩恵を受けているにも関わらず実無しの無用者と呼ぶのか。」

 私たちは日々、身近な恩恵に支えられて生きている。けれど、それがあまりに当たり前になると、感謝の気持ちを忘れ、目に見える成果や派手な価値ばかりを求めてしまう。プラタナスの木陰に救われた旅人たちが、その木を「実をつけない役立たず」と評したように・・・。
 この寓話が教えてくれるのは、「見えない価値への無自覚が、恩知らずを生む」ということだ。果実はなくとも、木陰は命を守る。それは、職場で目立たない人の気遣いや、日常に溶け込んだインフラのように、静かに職場を支えている存在だ。
 現代の組織や社会でも、成果主義や効率重視の風潮の中で、こうした「実をつけない木」が軽視されがちだ。しかし、真の持続可能性は、こうした見えにくい支えを尊重する姿勢から生まれる。
 感謝とは、ただ礼を言うことではなく、価値を見抜く眼差しを持つことなのだ。

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