短期利益か、長期信頼か
一眼の巨人(キュクロプス)
誠実で、仕事熱心な男がいた。長い間、家族ともども安定した生活を送っていたが、あるとき極度の貧困に陥ってしまった。男は将来に絶望し、みじめに生きるよりは死んでしまうことを選んだ。自ら剣を手にして、人気の無い場所へ出て行った。
しばらく行くと、とても深い穴を見つけた。中をのぞくと、そこには一眼の巨人が隠しておいた沢山の金塊があった。
この男は、たちまち恐れと喜びで胸がいっぱいになった。しばらく茫然と立ち尽くしていたが、手にしていた剣を捨て、金塊をすべて取り上げると、家族の待つ家へ帰って行った。
やがて一眼の巨人が穴に帰って来ると、金塊は見当たらず、剣がそこに落ちているのを見た。しばらく立ち尽くし、その剣を使って、自ら命を絶った。
※キュクロプス:ギリシア神話に登場する卓越した鍛冶技術を持ち、額に一眼を有する巨人
男は絶望の中で「生きる理由」を失いましたが、金塊を見つけた瞬間、「生活を立て直せる」という具体的な希望に変わりました。一眼の巨人は、金塊を失った瞬間、自分の役割や生きる理由を失い、剣を取って命を絶ちました。一眼は「欠けた認識」「不完全な知恵」を示します。巨人は富も力も持っていましたが、視野が狭いために生きる意味を金塊にしか結びつけられなかったのです。
この寓話は、資源や富そのものではなく、それをどう「生きる理由」に転換するかを問うています。組織も同じです。私が所属していた会社では、親会社から天下った社長が2年ごとに交代し、株主からは短期的な成果を求められました。その結果、利益至上主義に陥り「今期の数字」ばかりを追い求め、社員も取引先も消耗していったのです。これはまさに「一眼の巨人」の姿でした。
最低限の売上や利益はもちろん必要です。しかし、それを取引先や未来との関係に結びつける柔軟さこそが、持続可能性を生み出します。数字は目的ではなく結果。関係性こそが企業の命を支えるのです。
経営の神様・松下幸之助はこう語っています。
「万策尽きたと思うな。自ら断崖絶壁の淵にたて。その時はじめて新たなる風は必ず吹く。」
人生も組織も、一寸先は闇です。幸運の波に乗っていたかと思えば、突然不運に見舞われることもある。不運続きで捨て鉢になっていたところに、思いがけない幸運が訪れることもある。だからこそ、最後の最後まで諦めないことが大切なのです。
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