外見の変化は変容の保証ではない!
鼬(イタチ)とアプロディテ
鼬がハンサムな若者に恋をして「自分を女性の姿に変えてください」とアプロディテに祈った。女神は鼬の切ない気持ちを憐れんで、美しい乙女に変えてやった。
すると若者もそれを見て恋に落ち、妻にしようと家に連れて帰った。
二人が寝室でくつろいでいると、アプロディテは鼬がその姿を変えたものの、性格を改めたかどうか確かめたいと思い、鼠をポンと放り込んだ。
彼女は今の身の上を忘れ、ベッドからとび起きるや、食ってやろうと鼠を追いかけまわした。
その姿を見た女神はいたく立腹し、彼女を元の姿に戻してしまった。
アプロディテ:ギリシャ神話に登場する「愛と美と性」の女神です。ローマ神話では「ヴィーナス」として知られています。
外見を変えても本性は変わらない。
鼬(いたち)は恋をして人間の女性に姿を変えてもらったが、本能的な性質は変わらなかった。アプロディテはその「本性」を見抜き、見かけだけの変化では真の変化とは言えないとして、元の姿に戻してしまう。
この寓話が語るのは、「本質的な変化には、内面の意識や習慣の変容が不可欠である」という教訓だ。
これは組織においても同じことが言える。
「立場は人をつくる」という言葉がある。昇進などによって外形的な役割が変わると、人は自然とその立場にふさわしい振る舞いをするようになる――そんな期待が込められている。
しかし、これは条件付きの真理である。その条件とは、以下の三つだ。
1.役割に内在する期待が明確であること(例:「この立場ではこう振る舞うべき」という文化的圧力)
2.周囲の支援やフィードバックがあること(例:メンターの存在、チームの信頼)
3.本人に変化への意欲と柔軟性があること(例:責任感の芽生え)
新しい立場を得ただけでは、人の本性は変わらない。しかし、本人に変化への意志があり、環境がそれを支えるならば、「性質」と「環境」の相互作用によって本性の変容は可能になる。
この寓話が私たちに問いかけているのは、肩書きや見た目だけの変化ではなく、行動と意識の変容を伴うものである――という、静かだが揺るぎない真理である。
コメントを残す