形式的な励ましの毒
ストーリー
病人が医者に容態を聞かれ「異常に大汗をかいた」と答えると、「それは良いあんばいだ」と医者は言った。
二度目に様子を聞かれ「悪寒がして止まらない」と答えると、「それも良いあんばいだ」と医者は言った。
三度目にやって来て具合を尋ねるので、「下痢になった」と答えると、「それはまた良いあんばいだ」と言って医者は帰って行った。
親戚の者が見舞いに来て、「具合はどうだ?」と聞くので、
病人が答えた。「良いあんばいのおかげでもう駄目だ!」
無責任な楽観主義や、形式だけの対応は、かえって害になる。
特に、権威ある立場にある者が実態と誠実に向き合わず、空疎な言葉で済ませるとき――その言葉は、安心ではなく放棄になる。
「良いあんばいだ」という繰り返しは、診断ではなく逃避の言葉となり、患者の苦しみを覆い隠す。
この寓話は、言葉の責任と、権威の誠実さを問いかけている。
形式的な言葉が繰り返されるとき、私たちはそれを信じるべきか、それとも疑うべきか。
本当に必要なのは、言葉ではなく、向き合う姿勢なのではないか。
類似教訓
日本の昔話の教訓「二十三夜さま」
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