グリム童話の教訓「マリアの子供」

大きな森の入り口に木こり夫婦と女の子が住んでおりました。大変に貧しく子供に食べさせることも困るありさまでした。

ある朝、木こりが森へ入ると、いつの間にか木こりの前に美しい女が立っていて、木こりに言いました。「私はマリアと言います。あなたはその日の暮らしにも困っている様子。子供を連れてくれば、私がめんどうを見ましょう。」

木こりは、言われた通り女の子をマリアに預けると、マリアは天に向かって帰って行きました。

その女の子が十四歳になった時、マリアが呼び寄せて言いました。「私は、しばらく旅に出ます。留守の間、この十三の扉の鍵を預かってください。このうち十二までの扉は開けて構わないけれど、十三の扉は、絶対に開けてはいけませんよ。」

そして毎日、扉を一つ開けているうちに、十二の扉まで済んでしまいました。ある時、女の子の周りに誰もいなくなったので、こっそり十三の扉を開けてみると、ご本尊が火と光彩に包まれて鎮座する姿が見えました。その光彩にさわってみると、指の先が金色になりました。女の子は怖くなって逃げ出しました。

それから間もなくマリアがお帰りになり、女の子に鍵を返すように仰せられました。女の子が鍵の束を渡すと、十三の扉は開けなかったかい?」と尋ねます。

「開けていません」と女の子が答えると、マリは続けて同じことを尋ねます。女の子は、二度目の返事も、三度目の返事も、同じ「開けていません」と言うものです。

マリアは「あなたは、私の言いつけを守らないばかりか、嘘までつきました。もうここにいる資格はありません。」と言うと、いつの間にか女の子は下界へ下りていて、口がきけなくなり、独りぼっちになっていました。

しばらくすると、狩りに来ていたその国の王様が、その女の子を見つけ、城へ連れて帰りました。女の子は口がきけなかったものの、美しかったので、王様と結婚式をあげることになったのです。

一年たち、男の子が生まれた夜、マリアが現れ「本当の事を言うのなら言葉を戻してあげましょう。嘘を押し通すなら子供を連れてゆきます。」と言います。それに答えて「扉は開けておりません」と答えると、マリアは生まれたばかりの子供を取り上げ消えました。

その次の年も、次の次の年も、子供が生まれるとマリアが現れて、同じように問いただしても、「扉は開けていません」と同じ答えで、子供が取り上げられて行きました。

とうとう子供がいなくなったことが世間に知れ渡り、火あぶりの刑にされることになりました。柱に縛り付けられ、火が体のまわりで燃え出した時「せめて死ぬ前に、あの扉を開けたと白状出来たら、どんなにうれしいでしょう」としんみりと思いました。

すると、そのとたんに声が出て、「マリア様、私は扉を開けました。お許しください」と声を張り上げました。

その声をきっかけに、急に雨が降り出し炎を消しました。そして天からマリアが現れ「罪を悔いて懺悔をする者には、罪は許されるのです」と優しく仰せられ、三人の子供をお渡しになり、声を出せるようにして、一生涯の幸せをおさずけになりました。

教訓
正直になるにはエネルギーがいる。だから正直になるのはキツイと感じる時がある。しかし正直でいなければ、いつか大きなツケとなって自分に返ってくる。その場をごまかしてやり過ごせば、いずれ自分への報いとなる。だから心穏やかでいたいなら、自分に正直になるべきだ。

グリム童話の教訓「マリアの子供」
グリム童話の教訓「マリアの子供」

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