イソップ寓話の教訓No.42  「農夫と息子たち」

農夫と息子たち

 死期の迫った農夫が息子たちを一人前の農夫にしたいと思い、呼び寄せてこう言った。
 「倅たちや、私の畑の一つに宝物が隠してある。収穫を終えたら深く掘り起こしてみなさい。」息子たちは父親の死後、鋤や鍬を手に取って畑を隅から隅まで深く掘り起こしてみたが、宝物は見つからなかった。
 代わりに葡萄が何倍も実をつけた。

 父が伝えた「宝物」は実際の金銀ではなく、勤勉に畑を耕すことそのものが宝であるという教えでした。息子たちは父の言葉を信じて畑を隅々まで掘り返し、その結果、土がよく耕されて葡萄が豊かに実ったのです。この寓話は、「努力を惜しまない姿勢が未来の実りを生む」という普遍的な教訓を示しています。

 現代の組織に応用すると、父の言葉は「外発的動機付け」の仕掛けにあたります。息子たちは勤勉や農業の価値そのものではなく、金銀財宝という即効性のある報酬を期待して動きました。これはボーナスや昇進など、目に見える成果に引き寄せられて働く姿と重なります。

 しかし、実際に得られたのは宝物ではなく「葡萄が何倍も実った」という副次的成果でした。ここで息子たちは、耕すこと自体が宝物であると気づきます。つまり、外発的動機付けが「きっかけ」となり、最終的に「内発的動機付け」へと転換するプロセスが生まれたのです。これは報酬制度や目標設定が、やがて組織文化へと昇華する好例と言えるでしょう。

 もちろん現実の組織では、必ずしもこのように都合よく進むわけではありません。しかし、昇進や特別ボーナスといった外発的動機付けは、組織を動かす初期エネルギー源になり得ます。そして、その動機付けを内発的動機付けへと転換させる設計を持つことこそが、この寓話の「真の宝」なのです。

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