イソップ寓話の教訓No.22  「狐と木こり」

組織に潜む誠実さの試練

狐と木こり

 キツネが狩人から逃れて来て、木こりを見つけたので「かくまってください」と頼んだ。木こりは、小屋に隠れるように狐に勧めた。
 間もなく狩人たちがやって来て「狐がこっちへ来なかったか?」と尋ねるので、木こりは口では「見ていない」と答えながら、手で狐の隠れている所を指して教えていた。しかし狩人たちは、木こりの手の動きに気づかづ立ち去った。
 狐は狩人たちが立ち去ると、木こりに挨拶もしないで行こうとした。それを見た木こりは「命を救ってもらいながら、お礼も言わないのか!」と狐を非難した。
 狐は答えて「あなたの手の動きが言葉と同じなら、私は感謝もしたのですがね。」

 木こりは言葉では狐を「助ける」と言いながら、手では狐の居場所を示す――その行動は、裏切りそのものでした。これは「言葉と行動の不一致」を鋭く風刺した寓話です。木こりの本心は「誠実さ」ではなく、誰からも嫌われたくないという自己保身の欲望だったのではないでしょうか。狐には裏切りを見抜かれ、狩人には手のサインが届かない――木こりの行動は、信頼も得られず、評価もされない、という二重の無力さを露呈しています。
 組織では、中間管理職が追い込まれる構造的な矛盾だと思いませんか。上からの命令と現場の倫理の板挟みで、どちらにも嫌われたくないという気持ちから、部下に協力・上司に迎合していても、意図した相手に届かず、意図しない相手にだけ届くという誰からも信頼されない存在になってしまうでしょう。
 木こりも、中間管理職も、「味方のふり」をすることで、誠実さを演じるだけになってしまったのではないでしょうか。
 では、信頼を得るためには、どうしたら良いのでしょうか。
 それは、言葉と手を一致させることです。つまり誰に対しても一貫して伝えることが大切です。
 答えに困った時は「原則に忠実であること」。これが「誠実さ」であり、信頼の源にもなります。時に「誠実さ」は代償を伴うこともあるでしょう。
 あなたは、誰にも媚びず、原則に立つために――誠実さの代償を引き受ける覚悟がありますか。

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