むかし、王様とその娘がお城に住んでいました。
お城の近くには大きな暗い森があって、その森に泉がありました。ある暑い夏の日に、末娘が一人、泉の脇でまり遊びをしていたら、どうしたことか、まりが泉へ転がり落ちてしまったのです。
娘が泣いていると「どうしましたか?お姫様」と呼びかけるものがあります。声の方を見ると、水の中から一匹の蛙が顔を出していました。
娘は「私のまりが泉の中へ落ちたので泣いているの」と言うと、蛙は言って「私がまりを取ってきましょう。そうしたらお姫様の遊び友達にしていただけますか?」
娘は「ええ、約束します。」と言いました。
蛙は水に潜ると、間もなくまりをくわえて浮きあがってきて、まりをお姫様に渡しました。お姫さまはうれしくなり、蛙との約束はすっかり忘れ、お城へ走って帰ってしまったのです。
ところがあくる日、王様と娘が食卓についていると、戸を叩いて「お姫様、戸を開けてください!」と呼び立てます。
王様は、娘の様子がおかしいことに気づき、事の次第を知って、「約束したことは、どのような事でも守らなければいけません。さあ、行って開けておやりなさい。」と言いました。
食事が終わったあと、蛙は「お姫様のお部屋へ連れて行ってください!」と言いました。
娘は蛙が嫌になり泣き出すと、王様は「困っているときに力を貸してくれたのだ。後になって嫌だというのは理屈が通らないよ」と言いました。
お姫様は、腹が立って蛙を持ち上げると、壁に向かって投げつけました。ところが、蛙が床に落ちた時、美しい目をした王子に変わったのです。
王子は魔女の魔法にかかり、蛙にされていたことを話しました。王様も娘も、王子を大変気に入り、王子と娘は結婚されたそうです。
教訓
約束したことは、小さなことでも守りましょう。それが信頼につながります。
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