山羊飼いが山羊を牧場へ追って行った。そこへ野生の山羊が何匹か紛れ込んだので、みんな一緒に自分の檻に追い込んだ。
翌日はひどい嵐になり、牧場へ送り出すことが出来ないので、檻の中で世話をすることにして、自分の山羊には飢え死にしない程度の餌しかあたえず、紛れ込んだ野生の山羊たちには、自分の山羊にしてやろうと思い、たっぷりと餌をあたえた。
さて、嵐もやんで、一匹残らず牧場へ連れ出したところ、野生の山羊は山まで来ると、逃げようとした。「たくさん餌をもらっておきながら、逃げてゆくとは恩知らずだ」と山羊飼いが非難すると、野生の山羊たちは振り向いてこう答えた。
「だから警戒するのだ。あなたは昨日来たばかりの我々を、昔から一緒にいる者たちよりも大事にした。それなら、後で別の山羊が来ると、あなたは我々よりもそいつらを依怙贔屓(エコヒイキ)するに決まっているからさ」
この寓話の核心は、「一貫した公平さこそが信頼の土台」ということです。新旧にかかわらず、誠実に接することが、長く続く関係を築くための知恵なのです。
では、現実の商習慣と照らして、常連と一見客の扱いはどうだろうか。
常連客は長期的な関係性を築いてきた存在であり、店側がその信頼に応える形で特別な配慮をするのは自然なこと。これは「依怙贔屓」ではなく「信義への報酬」とも言える。
一見客を軽視すると、潜在的な常連になる機会を逃すというリスクをはらむ。
公平さの欠如は、誰にとっても不安の種になるのです。「公平」とは、すべてを同じにすることではなく、それぞれの関係性に応じた誠実な対応をすること。常連を大切にすることと、一見客を丁寧に迎えることは、両立できるはずです。

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