No.006「山羊飼いと野生の山羊」

 山羊飼いが山羊を牧場へ追って行った。そこへ野生の山羊が何匹か紛れ込んだので、みんな一緒に自分の檻に追い込んだ。
 翌日はひどい嵐になり、牧場へ送り出すことが出来ないので、檻の中で世話をすることにして、自分の山羊には飢え死にしない程度の餌しかあたえず、紛れ込んだ野生の山羊たちには、自分の山羊にしてやろうと思い、たっぷりと餌をあたえた。
 さて、嵐もやんで、一匹残らず牧場へ連れ出したところ、野生の山羊は山まで来ると、逃げようとした。「たくさん餌をもらっておきながら、逃げてゆくとは恩知らずだ」と山羊飼いが非難すると、野生の山羊たちは振り向いてこう答えた。
 「だから警戒するのだ。あなたは昨日来たばかりの我々を、昔から一緒にいる者たちよりも大事にした。それなら、後で別の山羊が来ると、あなたは我々よりもそいつらを依怙贔屓(エコヒイキ)するに決まっているからさ」

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