見過ごされた予兆とその代償!
ストーリー
ある商人が市場で商売をして、持ってきた商品を残らず売り切った。商人は夜にならないうちに家へ帰ろうと、自分の乗っている馬に鞄(カバン)をくくりつけ出発した。
正午にどこかの町で休憩したが、さて出かけようとする時に、下僕が馬をひいてきて言った。「旦那様、お馬の左の後あしの蹄鉄の釘が一本抜けておりますが。」
商人は「そのままにしておきなさい。道のりは、あと六時間あるだろうが、そのくらいでは蹄鉄は落ちはしまい。急いでいるからな」と言った。
お昼過ぎに、また一休みして、馬に食べ物をやらせると、下僕が部屋に来て言った。「旦那様、お馬の左の後あしの蹄鉄がなくなっております。鍛冶屋へ連れてまいりましょうか」商人は「とれたまんまにしておきなさい。あと一、二時間だ。それくらい我慢できるだろう。急ぐのだからな。」と言った。
そのまま出かけましたが、それほど経たないうちに、馬はびっこをひき始めた。びっこをひきだしたかと思うと、やがてつまずくようになり、つまずいているうちに、馬はばったり倒れて、あしを一本折ってしまった。
否応なしに馬はそのままにしておいて、商人は馬の背中にくくりつけてあった鞄(カバン)を自分でかつぎ、てくてく歩いて、夜中になって家に着いた。
商人は独り言で、「こんなひどい目にあったのも、もとはといえば、あの釘一本のせいだ、いまいましい奴だ!」
些細なことを疎かにすれば、やがて大きな事故へとつながる。事故は偶然ではなく、予兆を見過ごした結果として「起こるべくして起こる」ものだ。
他者に責任を押しつける前に、自らの見通しの甘さを省みるべきである。そして、同じ過ちを繰り返さぬよう、失敗を未然に防ぐ予防策を講じることが何より重要だ。それこそが、真の効率である。