カテゴリー: グリム童話

グリム童話にまつわる教訓を掲載

  • 忠義な動物(グリム童話)

    失って初めてその重みを知る!

    ストーリー

     ある男が村へやってくると、子供たちが集まって鼠をいじめていた。男は鼠を可哀そうに思い、子供たちにお小遣いをわたして鼠を逃がしてやりました。
     また別の村へくると、今度は猿がいじめれていた。男はこれをみると、子供たちにお小遣いをわたして猿を逃がしてやりました。
     それから三番目の村へくると、今度は熊がいじめられていた。男はまた子供たちにお小遣いをわたし熊を逃がしてやりました。
     男は手持ちのお金を使い果たしてしまったので、お城の倉庫に使いもしないお金があることを思い出し「あそこから少し借りてこよう、お金が手に入った時にもとへ返しておけばよいではないか!」と独り言を言い、忍び込んだのです。
     ですが、王様の家来に捕まってしまい、罰として箱詰めにされ川へ流される裁きを受けることになりました。

     ぷかぷか水に浮いていると、錠前をひっかく音やかじる音、鼻を鳴らす音が聞こえてきました。すると錠前が開いて蓋が跳ね上がり、先日、助けた鼠と猿と熊がそこに居ました。男は箱を開けてもらったものの、これから先はどうしたものか、みんなで相談していたところ、白い石がこちらへ流れてきました。
     すると熊が「これはうまいところへ来たもんだ!これは不思議な石でね、こいつを持っていると何でも願いが叶うんだ」と言いました。
     男は石を握ると「庭と厩舎のついている大きな屋敷が欲しい」と願い、それを言うと男は、 庭と厩舎のついている大きな屋敷 に座っていました。

     しばらくして、商人がここを通りかかりました。
    「素晴らしい御殿があるじゃないか!この前ここを通った時は砂浜だったんだがなぁ」
     商人は御殿に入り、例の男にこのような立派な御殿をどうしてこんなに速く作ったのか聞いたところ、男は「不思議な石のしわざですよ」と答えました。
     商人は、その石が欲しくてたまらず「自分の持っている品物を全部あげるので、その石と交換してほしい」と頼みました。男は並べられた品々に目がくらみ、心がしっかりしていなかったものだから、うっかり交換してしまいました。
     ところが石を手放してしまうと、そのとたんに幸せもみんな消え、鍵のかかった箱の中に座ってぷかぷかと浮いていました。

     それを見ていた鼠と、猿と、熊は、また男を助けようしましたが、以前より頑丈になった鍵を開けることができません。そこで三匹の動物は「またあの不思議な石を手に入れなければダメだ」ということがわかり、商人たちがいる御殿へ向かいました。
     
     御殿の中から不思議な石を手に入れた三匹の動物は、箱詰めの男へたどり着き、箱のふたをはね上げました。不思議な石を手にした男は「 庭と厩舎のついている大きな屋敷が欲しい 」と願い、願いが叶うと三匹の動物とともに一緒に住まって、なに不足ない日を送りました。

     その後、男は不思議な石を二度と手放すことは無かったそうです。

     不思議な石を手に入れた男は願いが叶うことが当たり前になった。するとその石の大切さを忘れてしまう。石が自分のもとから去ってしまうと元の不幸な境遇に。
     本当に大切なものは、時として目に入らなくなる。失ってみて、その有難さに気づく。
     健康、信頼、自由、愛情など、失って初めてその重みを知る。
     あなたの「不思議な石」は何か?それは理念か、信頼か、健康か、家族か、仲間か。

  • 知恵のある人たち(グリム童話)

    不正に対して不正で返すことは許されるのか!

    ストーリー

     ある日のこと、どこかの百姓の旦那がおかみさんに「三日間るすにするので、そのあいだに牛買いが来て牝牛を3頭買いたいといったら、二百ターレルより高く売ってくれ」と言って出かけました。
     あくる日、牛買いがやって来て牝牛を調べた後、おかみさんに値段を聞くと「ちょうどそのくらいの値段だ、牛はすぐに頂いていきます」と言い、牛を鎖から放し牛小屋から追い出しました。門を出ようとしたとき、おかみさんは「二百ターレル出さなきゃ、牛を連れて行ってはダメだよ」と言いました。
     牛買いは「あー、財布を忘れた!あとでお金を払うから、それまで一頭おいて、二頭だけ連れて帰ります。」
     なるほど、うまい考えだとおかみさんは関心しました。
     しかし、牛買いはお金を持って現れませんでした。

     三日目に帰ってきた百姓の旦那が、おかみさんから話を聞くと腹をたて、気晴らしに大通りへ出かけてしまいました。
     百姓の旦那が大通りの石に腰かけていると、女が荷車を引いてやって来ました。百姓の旦那は何かを思いつき、荷車の前をあっちこっち、うろうろしました。
     荷車を引いてきた女は百姓に「おじさん、なにしてんの!」と尋ねると、百姓は「おれは天国から落ちてきて、どうしたら戻れるやら考えてるんだ・・・。その車で天国へ連れて行ってくれないか」
     女は「天国から来たなら、うちの亭主はどうしてるか聞かせてもらえないか」と尋ねると、百姓は答えて「ああ、知っている。羊の番をしているよ。茨のとげで服がぼろぼろになっていたよ」。
     それを聞いた女は「それでは、お前様に財布を預けるから、うちの亭主に渡してくれないかい」と女は言い、百姓のポケットに押し込みました。
      百姓は家へ帰ってきて椅子に座り、こう思いました。「うまいことをやったな!」

     相手の無知や親切心につけこみ得をしようとするものはいつの世にもいる。騙された者が、別の場面で騙す者になる悪の連鎖。被害者が加害者になる、不正に対して不正で返すことは許されるのか、正義はどこにあるのか。

  • おいしいおかゆ(グリム童話)

    知っている者にとっては恵み、知らない者には災難!

    ストーリー

     むかし昔ある所に、貧乏な少女がお母さんと二人で暮らしていました。食べるものが何もないので森へ野イチゴを採りに行きました。
     森へ行くと見知らぬおばあさんと出会いました。おばあさんは少女が困っていることを知っていて、鍋を一つあげました。このお鍋は「おなべや、ぐつぐつ!」というと、おかゆをぐつぐつこしらえます。それから「おなべや、おしまい!」というと、おかゆをこしらえるのをやめるのです。
     少女はこのお鍋を持ち帰り、いつでもおかゆを作ってお母さんとおかゆを食べることが出来るようになりました。

     ある日、少女の留守にお母さんが「おなべや、ぐつぐつ!」と言うと、お鍋はおかゆをこしらえ始めました。お母さんはお腹いっぱいになったのですが、お鍋はおかゆを作り続けています。作るのをやめてもらおうと思いましたが、なんと言ったらよいかわかりません。おかゆがお鍋のふちからあふれて、そのうち家じゅうがおかゆでいっぱいになりました。
     その時、少女が戻ってきて、たった一言「お鍋や、おしまい!」と言ったら、お鍋はぐつぐついわなくなりました。

     娘は鍋の扱いを知っている。母親は知らない。
     知っている者にとっては恵み、知らない者には災難。こんな事例なんて山ほどある。法律、投資、試験、・・・等々。
     知識と経験の差が、幸福と苦難の分岐点だ。知らない事なら深入りしないほうが良い。

  • みそさざいと熊(グリム童話)

    情報収集の大切さ!

    ストーリー

     熊と狼が森を散歩していたところ、鳥のさえずりが聞こえた。熊は狼に「どんな鳥の鳴き声だろう?」尋ねた。
     狼は「あれは鳥の王様だよ!ご挨拶をしなくてはいけないんだ」と答えた。熊は「王様の御殿を見てみたい」というと、狼は「王様とおきさき様が、いなくなったら見に行こう」と言い、その場を通り過ぎた。
     しばらくして熊と狼が鳥の王様とおきさき様がいない時に、御殿を見に行きました。巣をのぞくと、みそさざいの雛が五、六羽いました。熊が「これが王様の御殿なのか」とバカにすると、みそさざいの雛たちは「馬鹿にするな、おぼえてろ!」わめきました。
      しばらくすると、みそさざいのお父さんとお母さんが帰ってきました。雛たちは熊に馬鹿にされたことを話すと、お父さんは「安心しておいで」と言うと、熊のほら穴に飛んで行き、熊に向かって「うちの子供たちをバカにしたな!ひどい目にあわせてやる、とけんかをしかけました。

     熊はけんかに備え狐を呼び出し「お前は知恵のあるやつだ。けんかに勝てるよう指図しろ」と言いつけたのです。狐は「私のしっぽが立っていれば、どんどん進んで下さい。しっぽを下ろしたら逃げ出すのですよ」と言いました。これを聞いていたみそさざいの仲間が、飛びかえってきて秘密をみそさざいに話しました。
     いよいよけんかが始まろうという日になると、みそさざいは蜂に「狐のしっぽの付け根を力まかせに刺してくれ」とお願いしたのです。しっぽの付け根を刺された狐はがまんしきれず、しっぽを股の間に挟みました。これを見た熊は勘違いしてほら穴へ逃げかえりました。
     その後、熊はみそさざいの雛たちにお詫びをしたそうです。

    情報を収集し上手に活用することで大きな成果につながった。会社組織においても情報は持っているに越したことはない。出来る限り多くの人とバランスよくコミュニケーションをとるように心がけることだ。相手に敬意を持って接すれば情報は集まってくる。それが何かの折に必ず役に立つことがあるのだ。

  • 熊の皮を着た男(グリム童話)

    誠実さ!

    ストーリー

     むかし昔、ある若造が兵隊で勇ましい働きをしました。小銃の玉が嵐のように飛んでくる中でも、いつでも先頭に立って進んだものです。戦争がある間は何でも順調でした。ところが戦争が終わると、兵隊は不要になり、お払い箱になりました。
     
     隊長から解雇を言い渡され、郷里へ戻ったものの両親はすでに亡くなり、兄弟たちは疎遠で「今更、お前の面倒を見ることは出来ない」と冷たく断られ一人で生きるしかありません。

     兵隊はさまよい歩き、ある荒野にさしかかりました。一本生えている木の下にしょんぼり座り込んで、自分の身の上をつくづく考えてみました。
     「銭は一文無し。覚えたのは戦争の小手仕事ばかり。だから平和になれば、自分には用がないわけだ。餓死することは見え透いているさ・・・。」

     その時、にわかにざわざわ音が聞こえ、辺りを見回すと、見たことのない男が目の前に突っ立っていました。
     「お前が困っていることは、ちゃんとわかっているぞ。だからお金をあげよう。だが、私も金を無駄にしたくないから、お金をあげる前にお前を試してみ見たいんだ。」
     兵隊は不思議に感じましたが「おれを試してみるが良かろう」と返事をしました。

     すると男が「お前の後ろを見てみろ」というので、兵隊は振り向きました。そこには大きな熊が兵隊めがけて跳びかかってくるところでした。
     兵隊は「鼻ずらに鉄砲を打ち込んで、うなれないようにしてやる!」というが早いか、狙いをつけて、熊の鼻づらに一発打ち込みました。熊は丸くなってひっくり返ったまま、ピクリとも動かなくなりました。
     男は「勇気はないこともないな。だが、もう一つある。これもやってもらわなくてはならぬ」といいました。 
     兵隊はこの男の正体が悪魔だとわかり答えました「おれが死んでから天国へ行くのを邪魔しないなら承知するが、邪魔するようなことならお断りだ!」

     悪魔は言いました「それは、お前の心がけ一つだ。お前はこれから7年の間、体を洗ってはいけない、ひげや髪の毛にくしを通してはいけない、爪を切ってはいけない、祈りを唱えてはいけない。お前に上着と外套をやるが、ずっと着ていなくはいけない。この7年のうちに、お前が死んだら、お前は私のものだ。もし生き延びたら自由になったうえ、金持ちでいられるだろう。」
     兵隊は、今の自分が生活に困ってどうにもならないこと、これまで何度も死ぬような目にあっていることを思いだし、覚悟を決めて悪魔の言うことを承知しました。
     
     悪魔は自分の上着を兵隊に渡して「この上着を着てポケットへ手を入れれば、いつでもお金がひとつかみづつ取れる」と言い、また熊の皮を剥ぎ取って
     「これをお前の外套にしろ。それから寝床もこれだ。他の寝床へもぐりこんではならぬ。お前はこの身なりにちなんで『熊の皮を着た男』という名をつけろ」というと、悪魔の姿は見えなくなりました。

     兵隊はその上着を着てポケットに手を入れてみると、なるほど、悪魔の言ったとおりでした。熊の皮を羽織って町に出て、自分の気が向けば、お金に糸目をつけず、どんなことでもやりました。一年目は人並みでしたが、二年目には髪の毛が顔中に覆いかぶさり、ひげは毛布の切れはし見たいなようでした。指には鉤のような爪が生え、顔には垢や汚いものが積もり、この人を見ると誰もが逃げ出しました。

     四年目に、どこかの旅籠へ行ったことがあります。宿の亭主はどうしても泊めたくないと言うので、ポケットから金貨をひとつかみ渡したところ、裏手の部屋をひとつ貸してくれました。ただし店の評判が悪くなると困るので、決して姿を見せないように熊の皮を着た男に約束させたのです。

     熊の皮を着た男が、日が暮れてから、たった一人ぽつんとして「どうか七年という歳月がたってしまいますように」と心底お願いしていた時、隣の部屋でなにやら嘆き悲しむ大きな声が聞こえました。戸を開けてみるとお爺さんが泣いているのです。そばへ寄るとおじいさんは飛び上がって逃げ出そうとしましたが、人の声をききわけ、親切な言葉をかけられたので、自分の心配のたねを熊の皮を着た男にうちあけるまでになりました。

     話を聞くと、おじいさんは財産を無くし、娘たちに食事も与えられない。宿賃も払えないので牢屋行きだと言うのです。熊の皮を着た男は、
     「お金はいくらでも持っているよ」と言って、宿の亭主を呼びよせ勘定を済ませたうえに、おじいさんのポケットへ金貨のいっぱい入っている財布を押し込んでやりました。

     おじいさんは恩返しに自分の3人の娘の中から一人選んで嫁にとってくれと自分の家へ連れてきました。
     長女はこの男をみると、驚いて逃げ出しました。次女は「以前やって来た熊の方がよっぽどましだ」と言いました。ところが末娘は「お父さんをすくってくれたのだから約束は守らないといけないわ」と言いました。

     熊の皮を着た男は、自分の指から指輪を抜いて二つに折りました。自分の方には末娘の名前を書き込んでしまい、のこり半分に自分の名前をしるして末娘に渡し、大切にしまっておいてくれと頼みました。それから男は別れを告げ、「私は、あと3年旅を続けなければならない。その時戻ってこなければ、私に義理立ては無用です。ですが、無事に戻ってこられるように神様に祈ってくれないか」と言いました。

     熊の皮を着た男は世界中を歩き回り、満7年経つといつぞやの荒野に帰ってきて木の下に座りました。間もなく風の音がざわざわすると悪魔が現れ、熊の皮を着た男の汚れを洗い落とし、髪の毛を櫛ですき、爪を切ってやりました。すると見た目が軍人らしくなり、以前より美しくなりました。

     元の兵隊さんへもどると、馬車に乗ってお嫁さんの家へ行きました。家についても誰も顔が分かりません。そこでお爺さんに末娘を嫁にくれないかと聞きました。おじいさんに呼ばれ、末娘が現れると、兵隊さんは、半欠けの指輪を取り出して末娘に渡しました。末娘が首にかけているもう半分の指輪を合わせると、ぴったりと合いました。「私はあなたと約束したお婿さんです。以前あった時は熊の皮を着ていたけれど、今は人間の姿を取り戻しました。」

     兵隊さんと末娘は結婚し、お金に不自由なく、幸せに暮らすことが出来たということです。

    若い時に、どんなに活躍していても、いずれお払い箱になる時は誰にでも来る。お払い箱になった時は惨めさ、悔しさ、ふがいなさ、世間の冷たさ、など感じる。
     自分が必要とされなくなった時、その時どのように考え行動するかで未来は変わる。ただし、自分の中の誠実さは失ってはダメだ!

  • グリム童話の教訓「麦の穂」

    失った時にその有難さを思い知らされる!

    ストーリー

    むかし神様が地上をご自分で歩いていたころ、麦の粒は茎の下の方から上の方まで、べたいちめんについていました。ですから穂も長いものであったのです。けれど人間の常として、ふんだんにあるものは、さほど有難く思わず軽はずみな気分になるものです。

    ある日のこと、女と小さい子供が、麦畑の脇を通りかかりました。小さい子供が、水たまりに落ちて、着ものを汚してしまったのです。母親は見事な穂をひとつかみむしり取って、それで子供の着ものを拭いてやりました。

    ちょうどそこを通りかかられた神様が、これをご覧になると、お腹立ちで「これからは麦の茎には、いっさい穂をつけてやらぬ。人間どもは天の恵みをうける値打ちがない」とおおせになりました。

    まわりで、このお言葉をうかがった者たちは、驚いて膝をつき言いました。「どうぞ、ほんの少しばかりでも、穂を茎に残しておいてくださいますように。人間には値打ちが無くとも、罪もない鳥のために、なにとぞ!」

    神様は、先々困るのがおわかりですから、可哀そうに思い、この願いをおききとどけなりました。こんなわけで、麦の穂は上の方だけ残っているのです。

    この物語の教訓は、
    身の回りに当然のようにあるものは、普段はどうでも良いというな気持ちになる。
    ところが、それを失った時に、その有難さを思い知らされる。

    麦の穂の画像
    グリム童話の教訓「麦の穂」